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沖縄の賃貸管理の特徴と管理会社の変更方法について

 本記事では、あまり語られることのない沖縄独自の賃貸管理の特徴と管理会社を変更する際の手続きや注意点について解説させていただきます。


 正しくご理解いただくために、不動産業界内の慣習やルールに踏み込んだ内容もありますので、分かりづらい表現もあるかもしれませんが、不動産オーナー様にとっては知っておいて頂いた方が良い情報ですので、ぜひ最後までご一読いただけましたらと思います。


アパートの前に管理会社の社員が整列


● 沖縄の賃貸市場の特徴と取引慣習について

 まず最初に、沖縄の賃貸慣習について、基本的な項目をいくつか整理してお伝えいたします。


 もちろん例外はありますが、沖縄の賃貸物件で多数を占めている募集条件は、「敷金」「礼金」「無し」「1ヶ月分」が約半々、関西エリアで良く見かける「敷引き」の仕組みは全くと言って良いほど採用されておらず、敷金については、ファミリータイプの物件に設定されやすい傾向にあります。


 「更新料」は無い物件が多く、設定されている場合も、関東エリアで一般的な「1ヶ月」を取るケースは稀で、大半が「更新手数料」という名目で「1〜2万円」程度を徴収することが多いです。


 また、他の都道府県と比較すると、契約期間満了時に自動更新ができないようになっている「定期借家契約」での募集や、連帯保証人の設定に加えて「家賃保証会社」の利用を必須にする募集条件が多いのが特徴です。


 そして、沖縄の賃貸市場の特徴として、最も注目すべきは「募集賃料の安さ」です。決して、他の地方都市に比べて賃料自体が著しく低いという訳ではありませんが、近年の沖縄の地価高騰に伴う売買価格の飛躍的な上昇に対して、賃料設定額は「現状維持~微増」程度に留まっており、売買価格の上昇率に賃貸価格が追随できていない状態がここ何年も続いています。全国的に見ても異常な乖離が生じているため、不動産投資市場における沖縄の収益物件の表面利回りは非常に低く、東京とほとんど同じような水準になっています。


 こういった現象には、沖縄の低所得者比率が高いという地域背景に加えて、沖縄の賃貸業界における「取引慣習」が影響しているものと考えられています。

 沖縄と県外の賃貸慣習における大きな違いのひとつに、新しい入居者が決まった際に不動産会社に支払う報酬制度の違いが挙げられます。県外では、入居者を募集するための広告活動に対する対価として、オーナーから管理会社(貸主から依頼を受けた不動産会社)に対して「広告料」を支払うのが一般的です。県外でも地域によって広告料の相場は異なりますが、「賃料の1~2か月分」程度であることが多く、賃貸需要が乏しいエリアほど賃料に対する広告料倍率は高くなる傾向にあり、「3か月分」が当たり前というような地域も実際に存在します。

 不動産会社が賃貸の仲介を行った際に受領できる「仲介手数料」は、貸主と借主を合計して「賃料の1か月分」が上限という風に法律で定められているのですが、現実的には、2社以上の不動産会社が協力して住宅の賃貸仲介業務を行った場合に、「0.5か月分」ずつの手数料では、報酬の額として少なすぎるという背景があることから、入居者を見つけた不動産会社(「客付会社」と言います)が借主から「仲介手数料」として「賃料の1か月分」を報酬として受領し、オーナーから依頼を受けた管理会社は、広告活動を行った対価として、貸主から「広告料」を受け取るのが全国的な慣習となっているのですが、この慣習が沖縄には定着していません。

 つまり、オーナー側は賃貸契約が成立した際に報酬を支払うことがありません。これはある意味、沖縄が賃貸成約時の報酬額(仲介手数料)のルールを忠実に守ってきた結果とも言えるのですが、県外には無い大きな特徴のひとつです。この違いがあることから、実は沖縄の収益物件は、他県の収益物件と比べると、「表面利回り」「実質利回り」の差が小さくなる傾向にあります。

 オーナーからすると一見好都合にも思えるこの慣習ですが、実はデメリットも存在します。県外で「広告料」の支払いが慣習化していった背景に立ち返ると、沖縄では「広告料」が持つ潤滑油の役割がないことにより、複数の不動産会社が協力して入居者を見つける際に、それぞれの不動産会社の報酬額が著しく低額になってしまうため、不動産会社同士が積極的に協力し合わない文化が構築されてしまったのです。

 「広告料」の適用がない場合は、借主が支払う仲介手数料(賃料の1カ月分)を客付会社と管理会社で0.5か月分ずつ折半することになります。6万円のワンルームであれば、3万円ずつです。これでは割に合わないと双方の不動産会社が感じている場合、どういった現象が起きるでしょうか。客付会社は、広告料無しの物件は積極的にお客様へ紹介しなくなり、管理会社は自社だけで入居者を探せるように、賃料を相場よりも安く設定し、他の不動産会社からお客様紹介の申請があっても、何かしら理由を付けて拒否(いわゆる「抱え込み行為」)するようになります。


 例えば、相場6万円の部屋を敢えて5万円で募集して、自社のお客様にすぐ入居してもらうことにより、3万円ではなく5万円の報酬を受け取るといった具合です。このように、沖縄の賃貸不動産市場は、賃貸仲介時の報酬額の基準を忠実に守り抜いた結果、管理会社による「低額な募集賃料設定」「物件の抱え込み」という行為が蔓延化してしまったのです。

 実際に、沖縄では賃貸物件が市場に出ると同時に、すぐに申込みが入るようなケースが非常に多いです。すぐに申込みが入る物件は大きく2種類に分けられます。①相場よりも安く募集を掛けている物件と、②相場賃料で県外から進出してきた大手アパート・マンション業者が募集をしている物件です。すぐに申込みが入る理由として、①は価格が安いので単純明快ですが、②については、この報酬体系の違いが関与しています。


 県外大手アパマン業者は、県外の慣習に則って、客付会社が入居者から受領する仲介手数料をそのまま客付会社が満額受け取って良いルールを広く採用しているため、沖縄県内の客付会社は大手アパマン業者の取り扱う物件を優先的に顧客に紹介する傾向が強いためです。


 インターネットで賃貸物件を検索した際に、複数の不動産会社が同じ物件情報を載せているケースを見かけることがあると思いますが、そのような物件の多くが、実は県外の慣習を取り入れた大手アパマン業者が募集している部屋なのです。


 つまり、入居者募集時に「県外方式」を採用すると、管理会社だけでなく、数多くの不動産会社が募集活動に積極的に協力してくれることになり、早期に相場の賃料で成約を取りに行くことが可能となるので、一時的な「広告料」の支払いは発生しますが、固定収入である「賃料」を上昇させることに繋がるのです。

 オーナーにとっては、どちらも一長一短にはなりますが、上記の仕組みを正しく理解した上で「県内方式」「県外方式」のどちらの賃貸戦略を導入していくかについて、検討していくことをお勧めします。どちらが良いという訳ではありませんが、弊社では賃貸管理受託時にこの仕組みについてしっかりとご説明し、オーナー様にご希望の方式を選択してもらうように心掛けています。


 例えば、近い将来にアパートを収益物件として売却する可能性がある場合などは、沖縄で定着した低い利回り相場を最大限に活かして、レバレッジ効果を発揮させるべく「広告料」を支払ってでも、高い賃料を取りに行った方が良いという状況も考えられます。

● 沖縄の賃貸管理料の相場と管理会社の見分け方について

 次に、沖縄の賃貸管理における「管理料」の相場(定価といっても良いかもしれません)については、月額賃料の5%です(条件によって、3%~4%で受託する会社も存在します)。これは、全国的な賃貸管理料の水準と相違ありません。

 ちなみに、東京や名古屋、その他地方の主要地域においても、基本的に管理料は5%が定価という認識が定着していますが、全国的に見ても関西エリアは賃貸管理料が安く、3~4%が相場と言われています。関西(特に大阪)では、5%を提示するとオーナーから高いと判断されてしまい、管理を受託することが難しい傾向にあります。沖縄ではそういった傾向はあまりありませんので、管理料の相場自体は決して安くないですが、前述の広告料の支払いが無いことを鑑みると、オーナーが負担する実質的な維持管理費の総額は、県外よりも低い水準になります。

 中には、沖縄県内でも3%を遥かに下回るような、信じられないほど安い管理料を謳って、管理業務を受託している不動産管理会社も存在します。しかしながら、そういった会社は、管理料の低さに比例する形で、信じられないほど評判も悪いものです。提案された「管理料」が安く魅力的に感じたら、まずはその会社の口コミを確認してみると良いでしょう。

 このような会社は、従業員ひとりが担当する管理物件の件数を増やすことによって、報酬額を低く維持しているため、必然的に激務で手が回らなくなることから、対応が行き届かない点に加えて、担当者の入れ替わりも激しい傾向にあり、「安かろう悪かろう」という概念が見事に体現化されてしまうのです。

 管理料が異常に安い管理会社に依頼していたオーナー様が、我慢の限界に達したタイミングで、管理を引き受けて欲しいというご相談を頂くことも多いですが、「今までと同じ管理料で業務を引き継いで欲しい」というご依頼は、基本的にお断りすることにしています。従前の管理料では、サービスの行き届いた役務を提供できないことに加えて、杜撰な管理が続いた不動産の管理を引き継いだ後には、管理状況の適正化を図るために、様々な調整業務が必要になることが多いためです。

 引き継ぐ物件の管理状況については、蓋を開けてみないと実際の中身は分かりません。「玉手箱」のようなものです。受け取った玉手箱の中身が、整理整頓された美しい状態であれば、スムーズに管理を承継することができますが、箱の中がグチャグチャで訳の分からない状態の場合は、中身をひとつひとつ整理整頓するところから始めないといけません。

 例えば、賃貸借契約書の内容と現状の賃貸条件が相違しているケースや、入居者から受けていた相談や依頼事項を管理会社が放置していたケースにおいては、まずその問題を解決するところから業務を開始することになるため、前の管理会社の管理が杜撰であればあるほど、引き継ぐ際の管理料はどうしても適正な報酬設定をする必要が出てきてしまうのです。

 管理料の安さを売りにした派手な広告に魅力を感じてしまうのも人間心理ではありますが、依頼する管理会社の評判をきちんと下調べしておかないと、不動産自体の価値が低下してしまうことにも繋がりますので、細心の注意が必要です。


 不動産投資家の中には、特定の管理会社が管理している物件は、購入対象から外す(買わない)という方もいらっしゃるほどです。一度、ご自身の不動産の管理状態についても、第三者目線で点検されることをおすすめいたします。



● 賃貸管理会社の変更方法と手続き上の注意点について


 最後に、管理会社を変更する際の手続き方法と注意点について解説いたします。


 まず、管理方法が「サブリース(転貸)方式」になっていて、オーナーと管理会社との間で「マスターリース契約」を締結している場合は、特に注意が必要です。不動産会社によっては中途解約を認めない場合もあり、そういった場合は、一般的な管理委託契約と法律の解釈が異なるため、個別に対応が必要になりますので別途ご相談ください。


 ここでは一般的な「管理委託契約」にて、不動産会社に管理を依頼している場合の変更手続きについてご説明いたします。管理会社の変更を検討されるきっかけは、多岐に亘りますが、よくあるお悩みとしては、

 ・担当者の感じが悪い、報告がない

 ・機敏に対応してくれない、動きが悪い

 ・入居者からのクレームが多発している

 ・書類の管理が杜撰で現状と一致していない

 ・口頭で全ての物事が進んでいく

 ・清掃が行き届いていない

 ・管理料以外で高額な費用を請求される

などが挙げられることが多いです。


 このような場合、まずは締結している「管理委託契約書」の内容をご確認ください。確認すべき項目は大きく3つです。


 一つ目は契約している「業務内容」についてです。不満を持っている業務が、契約の対象となっている業務なのかどうかをまずは確認します。例えば「共用部分の清掃が全然できていない」と不満を持っていても、契約内容に清掃業務の提供が入っていないとしたら、これに文句を言っても仕方がないのですが、契約役務内容が履行されていない場合は問題となりますので、まずは契約に基づいて役務がしっかり提供されているかどうかの現状を確認します。


 二つ目は「契約解除が可能となる要件」についてです。一般的な契約書であれば、通常は解約条項が盛り込まれていますので、その中で解約が可能となるような項目がないかを確認します。例えば、管理会社からの賃料の送金が遅延している場合や、前述の業務内容を全うしていない場合は、解除できるとされているケースが多いです。つまり、契約上のルールを破っているので解約するというパターンです。


 三つ目は「契約期間」「解約通知期間」に関する定めです。こちらは前述の違約に伴う解除ではなく「合意解除」という取り扱いになりますが、旧管理会社と揉めることなく穏便に管理会社の変更を行いたい場合には、通常は合意解除による解約を選択することが多いです。契約期間の満了に伴って解除(更新しない)するケースや、契約期間内に解約通知を行うことによって中途解約をするケースがあります。一般的には、契約期間は1〜2年、解約通知期間は1〜3ヶ月程度で設定されていることが多いですが、このルールに従って解除を申し出れば、旧管理会社との契約は解除することができます。


 旧管理会社の解約と同時に準備を進めなくてはならないのが、新管理会社の選任です。信頼ができそうな管理会社を見つけて、担当者から話を聞き、安心して任せられそうであれば、管理の引き継ぎ方法や時期について相談を進めてください。ここで賃貸管理における空白の期間(誰も管理していない期間)が発生しないように、よく打ち合わせをしておく必要があります。


 引き継ぎの際には、今までの「管理状況の伝達」「契約書類の引渡し」などが必要になりますが、引き継ぎの具体的な進め方としては、大きく下記の3つが挙げられます。


①旧管理会社 → オーナー → 新管理会社

②旧管理会社 → 新管理会社

③三者同席の上、引き継ぎを行う


 上記のうち、③が引き継ぎ漏れを防ぐ上では最も有力な選択肢になりますが、協力してくれない管理会社もありますので、状況に応じて、①や②の進め方も検討する必要があります。


 このフェーズで一番理想的なのは、旧管理会社に最新の管理状況や現在対応中の業務進捗について、「紙」「データ」にまとめて渡してもらうことです。これがあれば、言った言わないでトラブルになることも防げますし、スムーズに管理の引き継ぎを進めることができます。

 

 普段からきちんとデータ管理をしていない管理会社には面倒臭がられる場合もありますが、これについては無用なトラブルで入居者に迷惑をかけないためと粘り強く説明し、旧管理会社の最後の業務として、しっかりと対応していただくのが得策と考えます。


 賃貸管理会社の変更時は、特にトラブルが発生しやすいタイミングでもありますので、前述した沖縄の賃貸業界独自の慣習や管理会社の特徴なども踏まえた上で、信頼のできる新管理会社を見つけて、安心した不動産賃貸業に取り組んで頂けましたらと思います。


 良い管理会社との出会いが「不動産の付加価値向上」「オーナー様のストレス軽減」にも繋がることと思います。





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