9月19日に「地価調査」結果が発表され、沖縄県は全用途の平均地価+4.9%を記録し、2023年の地価上昇率が全国1位となりました。
「地価調査」は、都道府県が7月1日時点の1㎡あたりの土地の価格を調査し、一般の取引価格の指標として公表するもので、2023年(令和5年)は、県下284地点を対象としています。
沖縄が「全国1位」と聞いて、驚きの声もあるかもしれませんが、実はこの流れはある程度予測されていた方も多いです。なぜなら、新型コロナウイルスが蔓延する前から、元々沖縄の地価上昇率は全国トップ水準であったためです。
今回はコロナが収束に向かうと同時に、観光産業が再び盛り上がり、雇用が拡大し経済が活性化すると同時に、商業地がコロナ前の賑わいを取り戻しつつあるため、商業地の地価上昇率の回復が、県全体の平均地価の上昇を後押しする形となりました。
用途別に分解してみると、住宅地+4.9%(全国1位)、商業地+4.8%(全国2位)、工業地+10.0%(全国1位)と、全ての用途で大きく上昇していることが分かります。
「商業地」は前述の通り、ここ数年はコロナの影響で上昇率は停滞傾向にありましたが、沖縄の「住宅地」と「工業地」は、コロナ禍においても着々と上昇を続けていました。
このような近年の地価動向を考える上では、『コロナ』と『地価』の関係性について、よく理解しておく必要があります。
例えば、用途毎の代表的な建物の例を、下記のようにイメージしてみてください。
①住宅地 = 「家」(戸建&マンション)
②商業地 = 「オフィス」&「店舗」
③工業地 = 「工場」&「物流施設」
①住宅地
まず、コロナ禍においても人が住むところは絶対に必要なので、「家」の需要はそこまで変わりません。つまり、住宅需要はコロナにより受ける影響が元々少ないのです。
沖縄の住宅地が継続して上昇している理由は幾つもありますが、元々沖縄は他県に比べて持ち家比率が低く、住宅の購入ニーズが潜在的に高いところに、近年の異次元低金利政策が後押しする形で住宅市場の盛り上がりを見せている側面が大きいです。
②商業地
次に、「オフィス」や「店舗」はどうなったか。新型コロナによって「密」を避ける風習が強まったことを受け、テレワークやネットショッピング、家飲み(やオンライン飲み)の需要が急上昇したため、「働きに行く」「買い物に行く」「飲みに行く」という機会の減少に比例する形でオフィスと店舗の需要も減少し、コロナ禍においては、商業地の地価が全国的に停滞または下落に転じる動きとなっていました。
これが、昨今の新型コロナウイルスの5類移行に伴い、人の流れが戻り、オフィスや店舗の需要が復活してきたことに加えて、インバウンドを含めた観光客の増加も受け、商業地の地価が徐々に回復してきているような状況です。
③工業地
最後に工業地ですが、「工場」については、コロナの影響で稼働が減少した時期もありましたが、「モノ」を作る行為自体は、住宅と同じでコロナ禍においても絶対に必要な要素であるため、コロナが工場用地ニーズに与えた影響は極めて限定的でした。
注目すべきは「物流施設」ですが、コロナ前から元々成長産業であったEC(ネット通販)事業者が、コロナの影響を受けた消費者のオンライン購買行動の増加に伴い、更に大型の物流施設用地を必要とする動きが加速し、工業地の価格上昇に繋がった側面があります。
これに加えて沖縄は、元々物流用地が不足していたことや、近年の道路インフラ整備による大幅な交通利便性の向上により、特に南部エリアの工業地において、急激な地価上昇が続いています。
2022年のAmazon配送拠点の進出(豊見城市)や、来年開業予定のCostco倉庫(南城市)、更には、「沖縄国際物流ハブ構想」の流れを受けて、この傾向は今後もしばらく続くのではないでしょうか。
弊社から「国際通り」までは歩いて2分程なので、毎日のように人通りを観察していますが、ここ数カ月で観光客数は倍増している印象で、路面店もかつての賑わいを徐々に取り戻しつつあるように感じます。
「住宅地」「商業地」「工業地」の全てが上昇局面にあるここ沖縄で、皆さんも何か新しいことにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。